一期一会を大切に。

2014.12.03更新

 生命保険金が遺産に含まれるのか?という問題については,多くのブログやサイトで解説がなされているとおりです。

 すなわち,まず,亡くなった被相続人が受取人となっていない限り,保険金は,保険契約に基づいて,保険会社から直接受取人に支払われる受取人固有の財産ですから,遺産には含まれません。

 そして,生命保険金を遺産そのものでないとしても,生前贈与や遺贈と同様に,民法903条1項の特別受益として,生命保険金を遺産の額に加えて考えられないかという点についても,最決平成16年10月29日(民集58巻7号1979頁)が,原則としてこれを否定しました。

 但し,同最決は,「保険金受取人である相続人とその他の相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持ち戻しの対象として扱う例外を認めています。

 問題はこの「特段の事情」がいかなる場合に認められるかですが,同最決の解説にもあるように,まずは,基本的には,保険金の額の遺産総額に対する比率等の客観的な事情により著しい不平等が生じないかを判断し,さらに,身分関係や生活実態等のその他の事情から公平を損なうといえないかどうかを判断することになります。

 基本的な判断要素である,「保険金の額の遺産総額に対する比率」という点から見ると,東京高決平成17年10月27日(家庭裁判月報58巻5号94頁)は遺産の99%,名古屋高決平成18年3月27日(家庭裁判月報58巻10号66頁)は,遺産の約61%を占める死亡保険金について,最高裁判所平成16年10月29日決定の「特段の事情」を肯定し,特別受益性を肯定しています。

 これを見ると,生命保険金が数十万円ということはないし,遺産が億を超えるような人もそう多くはないでしょう。生命保険金も遺産総額も,いずれも数千万円単位であることはよくあると思うので,実は,この最決がいう「特段の事情」って,例外とは言いつつも,そんなにハードルが高い感じもしません。

 なので,“生命保険金は遺産に含まれない”という一般論だけで相続を片付けるのは不十分で,生命保険金の有無・金額の多寡もしっかり確認する必要があるように思います。

 しかし,生命保険金の受取りを受取人の相続人が素直に明らかにしてくれれば良いですが,対立している相続人相手には一筋縄ではいきません。

 私が実際に扱った案件では,最初は被相続人の遺産は,自宅不動産と預貯金しかなく,その遺産の総額や評価を巡って調停で争っていたのですが,念のために,預貯金の取引履歴にあった高額の送金先について銀行に弁護士会照会請求をかけたところ,一時払いの保険が出るわ出るわで,たちまち,遺産総額を超える保険金が判明しました。
 もともと依頼人も取れるだけ取ろうという考えがなかったので,特別受益性の争いまではしませんでしたが,それまでの遺産総額の争いはすっかり収まり,ほぼこちらの言い分通りですぐに調停がまとまったということがありました(調停でまとまらなければ過去の裁判例に照らして特別受益性が認められる可能性が極めて高く,そうすると一気に倍額になりますからね)。

 ところで,この一時払い終身保険は,普通の保険よりも加入しやすく,定期預金よりも元本が増えて,死亡保障まで付いているという,良いことづくめの,退職金の運用方法として,保険会社も熱心に販売している商品のようです。

 先の事案でも,まさに退職金からすべて一括払いされており,1年もしないうちにその方が亡くなったので,理論的な意味での保険金と保険料の等価性ではないですが(最判平成14年11月5日民集56巻8号2069頁が否定するように),まさに“預貯金が姿を変えただけ”という性格が強いものでした。

 このような一時払いの保険は,より特別受益性が認められやすいのではないかなという気がします。

 遺産の範囲で分からないことがありましたら,お気軽にご相談下さい。  

 東京みらい法律事務所

 弁護士 甲斐 伸明

 ☎03-5291-3090

 受付時間は平日9:30~17:30,土曜9:30~15:00

投稿者: 弁護士甲斐伸明

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